縮絨(しゅくじゅう)・水通し(みずとおし)の仕方。手編み物 編んだ後の仕上げ方法・洗い方。

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大久保 千聖

こんにちは。大久保です。ニット製品の最終工程には「洗い」の工程があります。専門用語で「ソーピング」「縮絨(しゅくじゅう)」と言います。編み物用語では「水通し(みずとおし)」と言われたりします。

私も学生の時は、大事に大事に作った作品を洗うなんで発想はありませんでした。ですが、ニット業界では、仕上げに洗う工程は必須です。洗うを専門にしている工場もあります。
60ろくまるで販売している糸は、工業の糸がほとんどなので、洗う工程は必須になります。特にウール系の糸は、洗うことによって、風合いがとてもよくなりますよ。洗わないなんで、もったいないです。

この記事では、「洗い」の工程について、ご紹介します。

なぜ、「洗い」が必要なのか

工業の糸、特にウール系の糸を紡績(糸にする)ときに必要なのが”オイル=油”です。ウール=羊の毛にはもともと油分が含まれていますが、紡績する段階で油分を均等に保つ=品質の安定のためにオイルを使用します。

もちろん、糸にする前の羊の毛は洗っていますが、もともと繊維に含まれている油分のことです。

この紡績の油が出来上がった糸にも付着しています。この油分のおかげで糸の乾燥をふせぎ機械などで編むときに編みやすくしてくれています。ですが、この油があると、ウール本来の毛の柔らかさが半減しています。なので、洗いの工程で、この油分を洗い流すことが必要になってきます。

手編みの場合は、手編み中にたくさんかいたであろう汗なども洗い落す目的もあります。

そして、油分を取り除き、トリートメントをします。このトリートメント=柔軟剤も風合いをよくする大切な工程です。

人のシャンプー&トリートメントと同じです。何日も洗っていない髪の毛よりも洗い立て、トリートメント仕立ての髪の毛はキレイでやわらかいですよね。

準備するもの

・タライ(洗面台の洗面ボールでOK!)

・中性洗剤(エマールやアクロンなど)

・柔軟剤(お好みで。エマールやアクロンには中性洗剤には柔軟剤が含まれていますのでなくてもOK!)

・たっぷりの湯

・洗濯機(脱水時に使用)

私は、洗面所の洗面ボールをタライがわりに使用しています。タライをお持ちの方はお風呂場で作業されるといいかと思います。

洗い工程

作品が編みあがりました!洗いの工程をご紹介します。

①アイロン・・まずは、仕上げのアイロンをしてください。蒸気アイロンです。蒸気をたっぷりと当てましょう。当てることによって、ウールの毛がリラックスしてこの後の工程をすんなり受け入れてくれます。

髪の毛も洗う前に櫛で梳かすと泡立ちがよくなるように、アイロンをかけると毛並みが整うので、浸透しやすくなりますよ。アイロンは櫛でとかす工程と一緒です。

②予洗い・・・37~40℃のお湯で30分〜1時間程度、漬け込みます。

※ここで洗剤を入れないでください!!

洗剤を入れてしまうと、洗剤の効果が半減されます。

人の体温は、約36度なので、自分と同じ温度かちょっと暖かいくらいがいいです。この温度だと皮脂などの油汚れが落ちる温度でもあります。ゆっくりと漬け込みをします。

※この漬け込みが重要です。この工程を怠ると洗剤や柔軟剤が浸透しなくなり毛玉になりやすくなったりします。

③本洗い・・・ここで洗剤を投入します。油分が多い糸は、洗剤を入れた瞬間に油汚れが「わっ」と出てきます。これは、よく洗剤が浸透した証拠です。②の予洗いの効果です。

3回くらい押し洗いをします。こすったり、絞ったりせずに優しく優しく押してください。
※ウールはの場合は、押し洗い
※モヘアやアルパカなど、毛を出したい場合は、編み地を回転させるように回し洗い
※カシミヤなどの場合は、モミ洗いをしてしっかり風合いを出します。

④すすぎ・・・お湯の汚れがなくなるまで、お湯を変えてすすいでください。

※柔軟剤を使用される方は、すすぎのあとに、柔軟剤を入れて柔軟剤の説明書通りの時間浸透させてください。
柔軟剤のあとは、すすぎをしないでくださいね。柔軟剤の効果がなくなります・・・。

⑤脱水・・・洗濯機を使用する場合は、ネットに入れて30秒くらいでOKです。手で絞るとその部分だけ伸びてしまう恐れがあるので、私はネットにいれての脱水機をおすすめします。それでも心配の方は、手で軽く押して水気を切ってさらにタオルで水気を吸い取ってあげましょう。

⑥乾燥・・・乾燥は部屋干しがおすすめです。脱水でついたしわを伸ばして干してください。
ニット用のネットの上に置いて干してあげてもいいですね。

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レース柄など、ブロッキングが必要な場合は整形させてから乾燥させて下さいね。

⑦仕上げアイロン・・・乾いたあとに仕上げの蒸気アイロンをします。

仕上げアイロンには、クッション(ヌードクッション)を使用するときれいに仕上がりますよ。

ニットのアイロンにはアイロン台よりもクッションがオススメ!

プロの方も行っている工程ですので、ぜひ試してみてくださいね。
洗うのは少し、勇気がいるかもしれませんが、洗う前を後での手触りは驚くほど違います~。
手持ちもニット製品も、洗った方がいいと思います。汚れが原因になり繊維が傷む場合もあります。

うまくいかなかった時の対処方法

まく風合いが出なかった時には、もう一度上記の方法を試してください。アルパカやモヘア・カシミヤなどの良い素材を使用した糸は洗うほどに風合いがよくなります。
②予洗いを行わない方や、すぐ③本洗いの工程に行ってしまうと効果が半減してしまいます。
また、ふわっとした感じが足りないなという場合には、完全に乾いてからタンブラー乾燥がおすすめです。タンブラーのたたきつけと風により、中に入りこんだ毛が出てきます。完全に乾いていない状態だと、毛が絡んで縮みの原因になるので注意です。

記事を書いた人

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大久保 千聖

文化服装学院ニット科卒。ニットの会社で働いています。
小さいころから、編み物が好きです。編み物って楽しいですよね。編み物の楽しさを多くの方に知って頂き、編み物の楽しさを広めたい!と手芸ブランド「60ろくまる」をスタートしました。趣味はもちろん編み物。ほかにステンドグラスを作ったり、頻繁に旅行に出かけます。

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